このページの情報について
このページ最後の「お断り」に記載した通り、このページの内容は原稿作成時の情報に基づいております。その後の税制改正により、制度が変更となっている部分がありますので、改訂版を掲載するまでその部分を読み替えてご利用ください。
法人成りはお得?
個人で事業をしていると多くの人が会社を設立することを考えます。いわゆる「法人成り」です。ただしそれが本当に有利なのか判断するのは非常に難しいことです。
ここでは「法人成り」した場合にどのようなメリット・デメリットがあるのかをお伝えしたいと思います。
ここでは「法人成り」した場合にどのようなメリット・デメリットがあるのかをお伝えしたいと思います。
給与所得控除
法人成りのメリットで最初に思いつくのが「給与所得控除」です。
給与所得者は給与を得るためにスーツ代などの費用がかかります。本来、給与所得金額は給与収入からこれらの費用を控除した金額(実収入)とすべきです。
しかし給与所得者が費用を集計するのは煩雑で事務コストがかかることから、「給与収入」から簡便的に「給与収入を得るための費用」を計算することとしています。この「給与収入を得るための費用」が給与所得控除です。
結果、給与所得は下記の算式により計算します。
給与所得金額= 給与収入の額 ― 給与所得控除額
平成29年分の給与所得控除額は以下の表のようになります。
65万円の青色申告特別控除個人事業主が法人成りした場合に「個人」と「法人」の所得金額がどのように変わるのか次の例で見ていきたいと思います。
(前提) 収入 2,000万円 経費 800万円
⑴青色申告をしている個人事業主の場合
事業所得金額=2,000万円(収入)ー800万円(経費)-65万円(青色申告特別控除)=1,135万円
⑵個人事業主が法人成りして、法人から役員報酬900万円の支払いを受ける場合
①法人の所得金額
2,000万円(収入)-800万円(経費)-900万円(役員報酬)=300万円
②個人の給与所得金額
900万円(役員報酬)-210万円(給与所得控除※)=690万円
※給与所得控除 900万円×10%+120万円=210万円
③ ①+②=990万円
⑴の1,135万円と⑵③の990万円を比較すると法人成りした場合の方が課税される所得金額は145万円少なくなります。これは個人事業主の場合、青色申告特別控除65万円を控除するのに対し、法人成りした場合には給与所得控除210万円を控除することが出来るからです。
青色申告特別控除より多額の控除が出来る給与所得控除は、法人成りの大きなメリットと言えます。
給与所得者は給与を得るためにスーツ代などの費用がかかります。本来、給与所得金額は給与収入からこれらの費用を控除した金額(実収入)とすべきです。
しかし給与所得者が費用を集計するのは煩雑で事務コストがかかることから、「給与収入」から簡便的に「給与収入を得るための費用」を計算することとしています。この「給与収入を得るための費用」が給与所得控除です。
結果、給与所得は下記の算式により計算します。
給与所得金額= 給与収入の額 ― 給与所得控除額
平成29年分の給与所得控除額は以下の表のようになります。
65万円の青色申告特別控除個人事業主が法人成りした場合に「個人」と「法人」の所得金額がどのように変わるのか次の例で見ていきたいと思います。
(前提) 収入 2,000万円 経費 800万円
⑴青色申告をしている個人事業主の場合
事業所得金額=2,000万円(収入)ー800万円(経費)-65万円(青色申告特別控除)=1,135万円
⑵個人事業主が法人成りして、法人から役員報酬900万円の支払いを受ける場合
①法人の所得金額
2,000万円(収入)-800万円(経費)-900万円(役員報酬)=300万円
②個人の給与所得金額
900万円(役員報酬)-210万円(給与所得控除※)=690万円
※給与所得控除 900万円×10%+120万円=210万円
③ ①+②=990万円
⑴の1,135万円と⑵③の990万円を比較すると法人成りした場合の方が課税される所得金額は145万円少なくなります。これは個人事業主の場合、青色申告特別控除65万円を控除するのに対し、法人成りした場合には給与所得控除210万円を控除することが出来るからです。
青色申告特別控除より多額の控除が出来る給与所得控除は、法人成りの大きなメリットと言えます。
個人事業主に適用される税率は?
個人事業主の所得に対しては
所得税 個人住民税 個人事業税
が課税されます。
所得税の税率は所得が高いほど適用される税率も高くなる超過累進税率(5%~45%)の方式がとられています。→平成29年4月1日時点での所得税の税率はこちら
個人住民税の税率は原則として10%です。
個人事業税の税率は3~5%ですが、大部分の個人事業主は5%が適用されます。ただし事業税は事業所得と不動産所得の合計額が290万円までは課税されず、290万円を超える部分について課税されます。
個人事業主の「収入-経費」に応じた所得税・個人住民税・個人事業税の負担と、その実効税率をまとめたものが次の表です。
数値は平成29年4月1日現在の法令に基づき計算しています。
端数処理はしていませんのでご了承下さい。
(注1)65万円の青色申告特別控除の適用を受け、専従者給与の支払いがないものとして計算しています。
(例)表中の「収入-経費」が3,000,000円の個人事業主の事業所得の金額は
3,000,000円-650,000円=2,350,000円 となります。
(注2)事業所得以外の所得はないものとして計算しています。
(注3)所得控除は基礎控除(所得税38万円・住民税33万円)だけであるものとして計算しています。
(注4)5%の事業税の税率が適用される業種であるものとして計算しています。
(注5)事業税は翌年の所得計算上、経費となりますが考慮していません。
(注6)地域によって税率が変わることがあります。
「収入-経費」が2,000万円の個人事業主の方は実効税率が38.28%とかなり高い税率が適用されますが、「収入―経費」が高くなると実効税率はさらに高くなります。
所得税 個人住民税 個人事業税
が課税されます。
所得税の税率は所得が高いほど適用される税率も高くなる超過累進税率(5%~45%)の方式がとられています。→平成29年4月1日時点での所得税の税率はこちら
個人住民税の税率は原則として10%です。
個人事業税の税率は3~5%ですが、大部分の個人事業主は5%が適用されます。ただし事業税は事業所得と不動産所得の合計額が290万円までは課税されず、290万円を超える部分について課税されます。
個人事業主の「収入-経費」に応じた所得税・個人住民税・個人事業税の負担と、その実効税率をまとめたものが次の表です。
数値は平成29年4月1日現在の法令に基づき計算しています。
端数処理はしていませんのでご了承下さい。
(注1)65万円の青色申告特別控除の適用を受け、専従者給与の支払いがないものとして計算しています。
(例)表中の「収入-経費」が3,000,000円の個人事業主の事業所得の金額は
3,000,000円-650,000円=2,350,000円 となります。
(注2)事業所得以外の所得はないものとして計算しています。
(注3)所得控除は基礎控除(所得税38万円・住民税33万円)だけであるものとして計算しています。
(注4)5%の事業税の税率が適用される業種であるものとして計算しています。
(注5)事業税は翌年の所得計算上、経費となりますが考慮していません。
(注6)地域によって税率が変わることがあります。
「収入-経費」が2,000万円の個人事業主の方は実効税率が38.28%とかなり高い税率が適用されますが、「収入―経費」が高くなると実効税率はさらに高くなります。
法人に適用される税率は?
法人の所得に対しては
法人税 地方法人税 事業税 地方法人特別税(平成31年廃止予定)
法人県民税 法人市民税
が課税されます。
法人の「収入-経費」に応じた法人税・地方法人税・事業税・地方法人特別税・法人県民税・法人市民税の負担とその税率をまとめたものが次の表です。
平成29年4月1日現在の法令に基づき計算してます。
端数処理はしていませんのでご了承下さい。
(注1)表中の税率は下記の条件を満たす法人に対して課される税率です。
所在地 栃木県小山市
資本金 一千万円未満
電気供給業(太陽光発電など)を営んでいない
(注2)事業税と地方法人特別税は申告した日を含む事業年度の経費となりますが、考慮していません。
(注3)地域によって税率が変わることがあります。
法人税 地方法人税 事業税 地方法人特別税(平成31年廃止予定)
法人県民税 法人市民税
が課税されます。
法人の「収入-経費」に応じた法人税・地方法人税・事業税・地方法人特別税・法人県民税・法人市民税の負担とその税率をまとめたものが次の表です。
平成29年4月1日現在の法令に基づき計算してます。
端数処理はしていませんのでご了承下さい。
(注1)表中の税率は下記の条件を満たす法人に対して課される税率です。
所在地 栃木県小山市
資本金 一千万円未満
電気供給業(太陽光発電など)を営んでいない
(注2)事業税と地方法人特別税は申告した日を含む事業年度の経費となりますが、考慮していません。
(注3)地域によって税率が変わることがあります。
個人事業主と法人の税率を比べてみると・・・
上記の「個人事業主」に対する税率と「法人」に対する税率を対比させた表が以下の表です。
この表を見て頂くと
⑴「収入-経費」が少ない場合は個人事業主に対する税率より法人に対する税率の方が高い。
⑵「収入-経費」が高くなると法人に対する税率より個人事業主に対する税率の方が高くなる。
⑶個人事業主は「収入-経費」が高い場合と低い場合とで適用される税率の差が大きい。
ということが分かります。
そこで所得が高い個人事業主は、法人成りをして法人から役員報酬が支払われるようにすれば、個人事業主に対して高い税率による課税行われていたものが、法人に対する(個人事業主ほど)高くない税率による課税となるため節税ができると考えられます。
ただし、法人から役員報酬を支払われた側では、役員報酬が給与所得として課税されます。この役員報酬に対する税負担も含めて考えていかなければなりません。
そこで次に役員報酬に対してどのような税率で課税されるのかということを見ていきたいと思います。
この表を見て頂くと
⑴「収入-経費」が少ない場合は個人事業主に対する税率より法人に対する税率の方が高い。
⑵「収入-経費」が高くなると法人に対する税率より個人事業主に対する税率の方が高くなる。
⑶個人事業主は「収入-経費」が高い場合と低い場合とで適用される税率の差が大きい。
ということが分かります。
そこで所得が高い個人事業主は、法人成りをして法人から役員報酬が支払われるようにすれば、個人事業主に対して高い税率による課税行われていたものが、法人に対する(個人事業主ほど)高くない税率による課税となるため節税ができると考えられます。
ただし、法人から役員報酬を支払われた側では、役員報酬が給与所得として課税されます。この役員報酬に対する税負担も含めて考えていかなければなりません。
そこで次に役員報酬に対してどのような税率で課税されるのかということを見ていきたいと思います。
役員報酬に対する税率は?
法人から役員に役員報酬を支払った場合、役員に対して課される税金の税率をまとめたものが次の表です。
(注1)給与所得以外の所得はないものとして計算しています。
(注2)所得控除は基礎控除(所得税38万円・住民税33万円)だけであるものとして計算しています。
(注3)地域によって税率が変わることがあります。
先に案内した 「個人事業主」に対する税率と「法人」に対する税率を対比させた表 と上記の 役員報酬に対する税率をまとめた表 を並べてみると次のようになります。
「収入-経費」が2,000万円の個人事業主が法人成りをして、法人から役員報酬を1,200万円支給される場合に税負担がどう変わるかを見ていきます。
⑴個人事業主の場合の税負担
20,000,000円×38.28%=7,656,000円
⑵法人成りをして、役員報酬が1,200万円支払われる場合の税負担
①法人の税負担 (20,000,000円-12,000,000円(役員報酬))×25.06%=2,004,800円
②役員の税負担 12,000,000円×20.96%=2,515,200円
③ ①+②=4,520,000円
個人事業主の場合と比べると 7,656,000円ー4,520,000円=3,136,000円 税負担を軽減することが出来ました!
今までのおさらいとなりますが、理由は
⑴個人事業主に高い税率で課税されていた所得(収入ー経費)が、「法人の所得」と「役員の給与所得」に分散されたので、(個人事業主に対する税率ほど)高くない税率で課税されることとなったこと。
⑵「役員の給与所得」を計算するにあたり、給与所得控除の適用により所得金額を減らすことが出来たこと。
です。
役員報酬の額が変わることにより税負担は変わりますので、単に法人成りをするのではなく税負担が少なくなるような役員報酬の額を設定することが重要になります。
(注1)給与所得以外の所得はないものとして計算しています。
(注2)所得控除は基礎控除(所得税38万円・住民税33万円)だけであるものとして計算しています。
(注3)地域によって税率が変わることがあります。
先に案内した 「個人事業主」に対する税率と「法人」に対する税率を対比させた表 と上記の 役員報酬に対する税率をまとめた表 を並べてみると次のようになります。
「収入-経費」が2,000万円の個人事業主が法人成りをして、法人から役員報酬を1,200万円支給される場合に税負担がどう変わるかを見ていきます。
⑴個人事業主の場合の税負担
20,000,000円×38.28%=7,656,000円
⑵法人成りをして、役員報酬が1,200万円支払われる場合の税負担
①法人の税負担 (20,000,000円-12,000,000円(役員報酬))×25.06%=2,004,800円
②役員の税負担 12,000,000円×20.96%=2,515,200円
③ ①+②=4,520,000円
個人事業主の場合と比べると 7,656,000円ー4,520,000円=3,136,000円 税負担を軽減することが出来ました!
今までのおさらいとなりますが、理由は
⑴個人事業主に高い税率で課税されていた所得(収入ー経費)が、「法人の所得」と「役員の給与所得」に分散されたので、(個人事業主に対する税率ほど)高くない税率で課税されることとなったこと。
⑵「役員の給与所得」を計算するにあたり、給与所得控除の適用により所得金額を減らすことが出来たこと。
です。
役員報酬の額が変わることにより税負担は変わりますので、単に法人成りをするのではなく税負担が少なくなるような役員報酬の額を設定することが重要になります。
配偶者控除・扶養控除
個人事業主は青色事業専従者給与を配偶者や家族に支給することができます。
青色事業専従者給与の支給により個人事業主本人の所得を分散させて適用される税率を下げられ、また給与を支給された配偶者や家族は給与所得控除の適用を受けることが出来るので税負担を軽減することが出来ます。
ただし、青色事業専従者給与の支給を受けた人は配偶者控除や扶養控除の対象とすることはできません。
一方法人成りした場合でも、法人は役員や従業員である配偶者や家族に給与を支給することが可能です。
この場合も所得を分散させて適用される税率を下げることや、給与を支給された配偶者や家族が給与所得控除の適用を受けることはできます。
さらに、個人事業主の青色事業専従者給与と異なり、一定の要件(所得が給与所得のみの場合、給与収入が103万円以下であることなど)を満たせば給与を支給された配偶者や家族について配偶者控除や扶養控除を適用することは可能です。
条件によりますが、法人成りした場合には所得の分散をより効果的に行うことができます。
青色事業専従者給与の支給により個人事業主本人の所得を分散させて適用される税率を下げられ、また給与を支給された配偶者や家族は給与所得控除の適用を受けることが出来るので税負担を軽減することが出来ます。
ただし、青色事業専従者給与の支給を受けた人は配偶者控除や扶養控除の対象とすることはできません。
一方法人成りした場合でも、法人は役員や従業員である配偶者や家族に給与を支給することが可能です。
この場合も所得を分散させて適用される税率を下げることや、給与を支給された配偶者や家族が給与所得控除の適用を受けることはできます。
さらに、個人事業主の青色事業専従者給与と異なり、一定の要件(所得が給与所得のみの場合、給与収入が103万円以下であることなど)を満たせば給与を支給された配偶者や家族について配偶者控除や扶養控除を適用することは可能です。
条件によりますが、法人成りした場合には所得の分散をより効果的に行うことができます。
純損失の繰越し 青色欠損金の繰越控除
青色申告を行う個人事業主は事業所得などから生じた損失がある場合、他の所得と相殺してそれでも損失があるときはその損失を3年間繰り越して、翌年以降の所得から控除することができます。
「青色申告で税金・国民健康保険税を減らす!!」でも案内しましたが「純損失の繰越控除」です。
一方青色申告を行う法人では、欠損金(損失)が生じた場合には9年(平成30年4月1日以後に開始する事業年度は10年)繰り越すことが出来ます。
「青色欠損金の繰越控除」です。
「青色欠損金の繰越控除」は「純損失の繰越控除」より繰り越すことが出来る期間が長いので、個人事業主では期限が切れてしまって損失を所得から控除できない場合でも、法人では損失を所得から控除することができるということがあります。
ここまで専ら法人成りをした場合の税金面のメリットをお伝えしてきましたが、税金面だけでなく社会保険や信用面など様々なメリット・デメリットがあります。
そのため、今まで述べてきたことのみで法人成りをするかを決めるのは適当ではありません。
次回のHP更新では法人成りのメリット・デメリットについてさらにほかの面からも解説しますのでご期待ください。
「青色申告で税金・国民健康保険税を減らす!!」でも案内しましたが「純損失の繰越控除」です。
一方青色申告を行う法人では、欠損金(損失)が生じた場合には9年(平成30年4月1日以後に開始する事業年度は10年)繰り越すことが出来ます。
「青色欠損金の繰越控除」です。
「青色欠損金の繰越控除」は「純損失の繰越控除」より繰り越すことが出来る期間が長いので、個人事業主では期限が切れてしまって損失を所得から控除できない場合でも、法人では損失を所得から控除することができるということがあります。
ここまで専ら法人成りをした場合の税金面のメリットをお伝えしてきましたが、税金面だけでなく社会保険や信用面など様々なメリット・デメリットがあります。
そのため、今まで述べてきたことのみで法人成りをするかを決めるのは適当ではありません。
次回のHP更新では法人成りのメリット・デメリットについてさらにほかの面からも解説しますのでご期待ください。
お断り
提供する情報は一般的なもので、いかなる個別の事案に対しても適用されることを保証したり、解決を提供するものではありません。具体的な事案においては、当該事案に対する個別の法的助言なくして、ご判断をなされないようにお願い申し上げます。
また、この記事の内容は、原稿作成時(平成29年)の情報に基づいているため、その後の法律改正等には十分注意されるようお願い申し上げます。
著者 相談員税理士・若林
また、この記事の内容は、原稿作成時(平成29年)の情報に基づいているため、その後の法律改正等には十分注意されるようお願い申し上げます。
著者 相談員税理士・若林